バイオマスビジネス、グリーン化ビジネス、環境負荷低減型触媒プロセス

部門の責任者（プロジェクトマネージャー）として、バイオマスエタノールから有用化学品を高選択的に合成する触媒プロセスを構築しました。石油由来ではないバイオマス由来の化学品は、カーボンニュートラルの観点からグリーン化すなわち環境負荷低減型の化学プロセスです。このプロジェクトは元来の所属企業の主力ではない新規事業開発品であるため、社内外の研究資金調達および営業部への納得してもらう説明から始まりました。基礎研究においては特許出願や学会発表によりコミュニティを拡げ、国内外の大学や企業とのパートナシップを構築しました。当時の所属企業では製造工場を持たないいわゆるファブレス企業でしたので、触媒を製造する企業、化学品生産プラントを設計・操業する企業、生産された化学品を販売する化学メーカーまたは商社等を見つけ、パートナーシップを結びながら実生産に進める必要がありました。

基礎研究の段階では、大学との共同研究を推進ししっかりとした秘密保持契約を結んだ上で国内外への学会発表や論文投稿活動をフォローし、実用化に向けては主に海外メジャー化学メーカーとの共同開発を進めることで大きな資本を利用して事業の加速化を図りました。所属企業のような中小企業が海外の圧倒的な資本を有するメジャー企業を相手にするには、絶対的で確実な技術力とニッチなところをしっかりフォローできる体制作りが必要です。そのためライセンシングには特に注力しました。触媒を製造して化学品生産メーカーに売るだけの利益でなく、そのプラントから生産された化学品の売り上げの○%を配当とする契約を獲得しました。

触媒の製造においても、研究所の開発品を製造工場でスケールアップする際の障壁を除去するための対策として、緻密かつ説得力のある開発プロセスおよび製造プロトコル案の説明、製造現場での確実な情報共有と研究開発への的確なフィードバックによる風通しの良い関係性の構築に注力しました。それまでは「実験室の結果を工場にそのまま持ち込まれてもモノはできない」と一蹴されていた工場での実生産契約を締結することができました。

中小企業ではいわゆる「ヒト、モノ、カネ」が不足するのは否めません。いかに周囲を巻き込んで自分たちの力にするかが鍵となります。所属企業では独自に獲得した技術と知財を武器に、大学や大手企業を相手に交渉を重ねました。その際様々な契約事項、とくにMTAやNDAを締結する場合があります。中小企業の立場から大手企業がどのような点を重視しているのか、どういった点に応えれば良いのか蓄積があります。また大手企業の立場から中小企業に対して彼らが抱えている問題や特性に対してどのように対応したら良いのかが分かります。契約書作成やその後の共同開発等を進めていく上で、効果的なアドバイスができます。